「病院や施設に通わなくても、自宅で専門的なリハビリが受けられたらいいのに…」 「もっと気軽に、自分のペースでリハビリを続けたい…」
患者さんから、そんな声を聞いたことはありませんか? あるいは、理学療法士として、 「もっと多くの人に、質の高いリハビリを届けたいけど、地理的な制約がある…」 「感染症が心配で、なかなか対面でのリハビリが進められない…」 と、もどかしさを感じている方もいるかもしれません。
そんな現代の医療・介護ニーズに応える新たな選択肢として、今、急速に注目を集めているのが**「オンラインリハビリテーション(遠隔リハビリテーション)」**です。
ICT(情報通信技術)を活用し、患者さんとセラピストが離れた場所にいても、映像や音声を通じてリハビリテーション指導や相談を行えるこの新しいサービスは、特に新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経験した私たちにとって、その可能性の大きさを実感する機会となりました。
「オンラインで、本当にちゃんとしたリハビリができるの?」 「理学療法士の役割って、どう変わっていくんだろう?」 「メリットは分かるけど、課題も多いんじゃないの?」
この記事では、そんなあなたの疑問に答えるために、オンラインリハビリの最新事情について、その大きな可能性と、普及に向けた乗り越えるべき課題、そしてこの新しい時代において理学療法士に求められる新たな役割とスキルについて、詳しく解説していきます。
オンラインリハビリは、私たちの働き方や、リハビリテーションのあり方を大きく変える可能性を秘めた、まさに「未来のスタンダード」となるかもしれません。 その変化の波を捉え、理学療法士としての新たな価値を創造していくためのヒントを、一緒に探っていきましょう。
自宅でリハビリが当たり前に?急拡大する「オンラインリハビリ」の世界
数年前までは、一部の先進的な取り組みとして語られることの多かった「オンラインリハビリ」。しかし、技術の進化と社会のニーズの変化により、今や私たちの身近な選択肢の一つとなりつつあります。まずは、この新しいリハビリテーションの形について、基本的な理解を深めましょう。
オンラインリハビリとは?基本的な仕組みと提供形態(リアルタイム、オンデマンド)
**オンラインリハビリテーション(遠隔リハビリテーション、テレリハビリテーションとも呼ばれる)**とは、情報通信技術(ICT:パソコン、スマートフォン、タブレット、ビデオ会議システムなど)を活用し、理学療法士などのリハビリ専門職が、患者さんと地理的に離れた場所から、リハビリテーションサービスを提供する形態のことです。
主な提供形態としては、
- リアルタイム型(同期型):
- ビデオ会議システム(Zoom、Google Meetなど)を通じて、セラピストと患者さんがリアルタイムで映像と音声をやり取りしながら、評価、運動指導、相談などを行います。
- 対面に近い形でのコミュニケーションが可能です。
- オンデマンド型(非同期型):
- 事前に録画された運動指導動画や、個別に作成されたリハビリプログラムなどを、患者さんが自分の好きな時間に視聴・実施し、その結果をセラピストが後から確認・フィードバックする形式。
- 患者さんの生活リズムに合わせやすいというメリットがあります。
- ハイブリッド型:
- リアルタイム型とオンデマンド型を組み合わせたり、対面リハビリとオンラインリハビリを併用したりする形式。
これらの形態を、患者さんの状態やニーズ、環境などに合わせて、柔軟に使い分けていくことが求められます。
なぜ今注目される?コロナ禍が加速させたニーズと技術の進化
オンラインリハビリが、ここ数年で急速に注目を集めるようになった背景には、いくつかの要因があります。
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック:
- 感染リスクを避けるため、非接触・非対面での医療提供の必要性が高まり、オンライン診療と共にオンラインリハビリへの期待が一気に高まりました。
- 多くの医療機関や施設が、オンラインリハビリの導入を検討・開始するきっかけとなりました。
- ICT技術の進化と普及:
- 高速なインターネット回線、高性能なスマートフォンやタブレット、そして使いやすいビデオ会議システムなどが、一般家庭にも広く普及したこと。
- ウェアラブルデバイス(活動量計、スマートウォッチなど)や、AI(人工知知能)を活用した動作解析技術などの進歩も、オンラインリハビリの質の向上に貢献しています。
- 医療・介護ニーズの多様化:
- 通院が困難な高齢者や障害者、医療過疎地域に住む人々へのリハビリ提供。
- 仕事や育児で忙しい現役世代の、時間的制約への対応。
- 予防医療や健康増進への関心の高まり。
これらの要因が複合的に絡み合い、オンラインリハビリは、特別なものではなく、**リハビリテーション提供の一つの「当たり前の選択肢」**として、その地位を確立しつつあるのです。

対象となる患者さんは?疾患や状態による向き不向き
オンラインリハビリは、全ての患者さんにとって万能というわけではありません。 やはり、疾患の種類や重症度、患者さんのITリテラシーなどによって、向き不向きがあります。
【オンラインリハビリが比較的適していると考えられるケース】
- ある程度状態が安定しており、医師から運動療法の許可が出ている方
- 慢性的な運動器疾患(腰痛、肩こり、変形性膝関節症など)で、セルフエクササイズ指導が中心となる方
- 脳卒中後遺症などで、退院後の在宅での自主トレーニング継続支援が必要な方
- スポーツ障害後のリハビリで、競技特有の動作指導やコンディショニングが必要な方
- 介護予防や健康増進を目的とした運動指導
- 遠隔地に住んでいる、あるいは通院が困難だが、専門的な指導を受けたい方
- ある程度のITリテラシーがあり、オンラインでのコミュニケーションに抵抗がない方
【オンラインリハビリが慎重な検討を要するケース】
- 急性期で状態が不安定な方、厳密なリスク管理が必要な方
- 重度の認知症や高次脳機能障害があり、指示理解やコミュニケーションが難しい方
- 触診や徒手療法が不可欠な評価・治療を必要とする方
- IT機器の操作が極めて困難な方、あるいはサポートしてくれる家族がいない方
- オンラインでのコミュニケーションに強い不安や抵抗を感じる方
対面リハビリとオンラインリハビリ、それぞれのメリット・デメリットを理解し、患者さん一人ひとりの状態やニーズに合わせて、最適な提供方法を選択することが、私たち理学療法士に求められる判断力です。
理学療法士にとって、オンラインは「新たなフロンティア」か?
オンラインリハビリの普及は、私たち理学療法士にとって、 「仕事が減ってしまうのではないか…」 「これまでのスキルが通用しなくなるのではないか…」 といった不安を感じさせる側面もあるかもしれません。
しかし、見方を変えれば、オンラインという新しいツールは、
- これまでアプローチできなかった、より多くの患者さんにサービスを届けられる
- 時間や場所の制約を超えて、より柔軟な働き方ができる
- テクノロジーを活用して、より効果的で個別化されたリハビリを提供できる
- 予防や健康増進といった、新たな分野での活躍の場が広がる といった、**理学療法士としての可能性を大きく広げる「新たなフロンティア」**とも言えるのです。
大切なのは、変化を恐れるのではなく、新しい技術を積極的に学び、それを使いこなし、オンラインならではの価値を提供できる理学療法士へと進化していくことです。
こんなに便利!オンラインリハビリがもたらす5つの大きな「可能性」
自宅にいながら専門的なリハビリが受けられるオンラインリハビリ。その手軽さだけでなく、実は医療・介護の様々な課題を解決する大きな「可能性」を秘めています。ここでは、オンラインリハビリがもたらす、特に注目したい5つのポジティブな側面を見ていきましょう。
可能性①:【場所を選ばない】地理的制約を超え、医療過疎地にも専門的ケアを!
オンラインリハビリの最大のメリットの一つは、**「場所を選ばない」**ことです。
- 医療過疎地域への貢献: 近くにリハビリ施設がない、あるいは専門的な理学療法士がいない地域に住む人々でも、都市部の専門家による質の高いリハビリテーションを受けることが可能になります。
- 通院困難者のサポート: 交通手段がない高齢者や、重度の障害で外出が難しい人々、あるいは育児や介護で家を空けられない人々にとっても、自宅でリハビリを受けられることは大きな助けとなります。
- 海外在住者への対応: 海外に住む日本人や、日本のリハビリテーションに関心のある外国人に対しても、サービスを提供できる可能性が広がります。
地理的な制約によって、必要なリハビリを受けられない人を減らすことができる。これは、オンラインリハビリが持つ、非常に大きな社会的意義と言えるでしょう。

可能性②:【時間的柔軟性】患者さんの都合に合わせやすい、継続しやすい環境
対面リハビリの場合、患者さんは予約時間に施設へ通う必要があります。 仕事や家事、学校などで忙しい人にとっては、この時間的な制約が、リハビリ継続の大きなハードルとなることがあります。
オンラインリハビリであれば、
- 移動時間が不要なため、リハビリ前後の時間を有効に使える。
- 患者さんの**都合の良い時間帯(例:仕事終わり、家事の合間など)**に予約を入れやすい。
- オンデマンド型のコンテンツであれば、24時間いつでも自分のペースでリハビリに取り組める。
これにより、リハビリテーションへのアクセスが容易になり、治療の継続率向上も期待できます。 特に、慢性疾患の管理や、予防的な運動習慣の定着など、長期的な関わりが必要な場合に有効です。
可能性③:【感染リスク低減】自宅で安心・安全にリハビリを受けられる
新型コロナウイルス感染症の経験から、私たちは感染症対策の重要性を改めて認識しました。 オンラインリハビリは、非接触・非対面でサービスを提供できるため、感染リスクを大幅に低減できます。
- 患者さん側のメリット: 免疫力が低下している高齢者や、基礎疾患を持つ患者さんなどが、感染の心配なく、安心してリハビリを受けられる。
- セラピスト側のメリット: 自身が感染するリスク、あるいは無症状のまま患者さんに感染させてしまうリスクを減らせる。
- パンデミック時や災害時にも: 医療機関へのアクセスが困難な状況でも、リハビリテーションを継続できる可能性がある。
**「安心・安全」**というキーワードは、これからの医療において、ますます重要になっていくでしょう。
可能性④:【コスト削減効果】通院負担の軽減、施設の効率的運用
オンラインリハビリは、様々な面でコスト削減に繋がる可能性があります。
- 患者さん側のメリット:
- 通院にかかる交通費や時間を削減できる。
- 遠方の専門施設に通う場合の、宿泊費などの負担も軽減される。
- 医療機関・施設側のメリット:
- リハビリテーション室のスペースや設備への投資を抑えられる可能性がある。
- セラピストの移動時間を削減し、より多くの患者さんに対応できる可能性がある(訪問リハビリとの比較)。
- 施設の稼働率向上や、新たな収益源の確保に繋がる可能性がある。
もちろん、オンラインシステム導入の初期費用や、運営コストも考慮する必要がありますが、長期的には、医療・介護費全体の効率化に貢献する可能性を秘めています。
可能性⑤:【データ活用】ウェアラブル機器連携で、より個別化されたアプローチ
オンラインリハビリは、**ウェアラブルデバイス(活動量計、スマートウォッチ、モーションセンサーなど)**や、**AI(人工知能)**といったテクノロジーとの親和性が非常に高いです。
- 客観的なデータ収集: ウェアラブルデバイスが、患者さんの日常生活における活動量、運動の正確性、睡眠パターンなどを自動的に記録・収集する。
- リアルタイムフィードバック: 収集されたデータに基づいて、AIが患者さんに適切なフィードバックを提供したり、セラピストにアラートを送ったりする。
- 個別最適化されたプログラム: AIが、患者さんの状態や目標、収集されたデータなどを統合的に分析し、より個別化された、効果的なリハビリプログラムの作成をサポートする。
- 治療効果の客観的評価: データに基づいて、リハビリの効果を客観的に評価し、プログラムの修正や、患者さんへの説明に活用する。
「勘」や「経験」だけでなく、「データ」に基づいた、より科学的で、個別性の高いリハビリテーションの実現が期待できます。
まだまだ課題も山積…オンラインリハビリ普及に向けた「乗り越えるべき壁」
大きな可能性を秘めたオンラインリハビリですが、その本格的な普及に向けては、まだまだ解決すべき課題も少なくありません。メリットばかりに目を向けるのではなく、現実的な「壁」も理解した上で、どう乗り越えていくかを考える必要があります。
課題①:【触診・徒手療法の限界】オンラインでは難しい「手技」への対応
理学療法士の大きな強みの一つが、**「触診」によって患者さんの身体の状態を詳細に評価し、「徒手療法」によって直接的に介入するスキルです。 しかし、オンライン環境では、この「手で触れる」**という行為ができません。
- 筋緊張の評価、関節の遊びの評価、圧痛点の確認などが難しい。
- 関節モビライゼーションや、筋膜リリースといった徒手的な治療手技が直接行えない。
- 介助が必要な運動のサポートが難しい。
この**「触れられない」という制約**の中で、いかに質の高い評価と治療を提供できるか。 視覚情報や患者さんからの主観的な情報を最大限に活用したり、セルフケア指導のスキルを高めたり、あるいは対面リハビリと効果的に組み合わせたりといった工夫が求められます。
課題②:【安全性・リスク管理】遠隔での急変対応や事故防止策
オンラインリハビリは、患者さんが自宅など、セラピストから離れた場所で行うため、安全性への配慮とリスク管理がより一層重要になります。
- 患者さんの状態把握: バイタルサインの確認、痛みの程度、疲労度などを、画面越しに的確に把握する必要がある。
- 環境設定の重要性: リハビリを行うスペースの確保、転倒リスクのある障害物の除去、滑りにくい床材などを、事前に患者さんやご家族に指導する必要がある。
- 急変時の対応プロトコル: もしリハビリ中に患者さんの容態が急変した場合、どのように対応するか(救急要請、家族への連絡、主治医への報告など)を、事前に明確に定めておく必要がある。
- 運動指導の安全性: 画面越しでの指導では、患者さんの動作を細部まで確認するのが難しい場合があるため、無理のない、安全な範囲での運動を指示する。
対面以上に、慎重なリスク評価と、徹底した安全管理体制の構築が不可欠です。
課題③:【ITリテラシー格差】患者さん・セラピスト双方の機器操作スキル
オンラインリハビリを行うためには、患者さん、そしてセラピスト双方に、ある程度の**ITリテラシー(情報通信技術を使いこなす能力)**が求められます。
- 患者さん側:
- パソコン、スマートフォン、タブレットなどの端末操作に慣れているか?
- 安定したインターネット環境があるか?
- ビデオ会議システムなどのアプリをインストールし、操作できるか?
- 特に高齢者の場合、これらのIT機器の操作に困難を感じるケースが多い。家族のサポートが不可欠な場合も。
- セラピスト側:
- ビデオ会議システムの円滑な操作。
- オンラインでの資料共有や、画面操作のスキル。
- ITトラブル発生時の、基本的な対応能力。
**デジタルデバイド(情報格差)**をどう乗り越え、誰でも利用しやすいサービスにしていくかが大きな課題です。 分かりやすいマニュアルの作成や、操作サポート体制の充実などが求められます。
課題④:【信頼関係構築の難しさ】非対面でのコミュニケーションの工夫
対面でのコミュニケーションに比べて、オンラインでは、相手の表情や声のトーン、雰囲気といった非言語的な情報が伝わりにくく、信頼関係を築くのが難しいと感じる場合があります。
- 視線が合いにくい: カメラの位置などにより、相手としっかり目が合っている感覚が得られにくい。
- 微妙なニュアンスが伝わりにくい: 言葉だけでは、感情や意図が正確に伝わらないことがある。
- 一体感の醸成が難しい: 同じ空間を共有していないため、連帯感や親密感が生まれにくい。
セラピストには、
- より意識的なアイコンタクトや、豊かな表情
- 声のトーンや間の取り方の工夫
- 丁寧な言葉遣いと、共感的な傾聴
- チャット機能などを活用した、こまめなコミュニケーション といった、非対面であることを補うための、高度なコミュニケーションスキルが求められます。
課題⑤:【診療報酬・制度整備】オンラインリハビリの適切な評価と普及促進
オンラインリハビリが本格的に普及するためには、診療報酬制度や、関連する法制度の整備も不可欠です。
- 診療報酬上の評価: オンラインリハビリが、対面リハビリと同等、あるいはそれに準じた形で、適切に診療報酬で評価される必要がある。算定要件や点数が明確に定められなければ、医療機関は導入に踏み切りにくい。
- 実施基準・ガイドラインの策定: 安全性や質の担保、個人情報保護などに関する、明確な実施基準やガイドラインが必要。
- 法的責任の明確化: オンライン上で発生した事故やトラブルに関する、法的責任の所在などを整理する必要がある。
- 他職種連携の仕組み: オンライン環境下での、多職種間のスムーズな情報共有や連携体制の構築。
これらの制度的な課題がクリアされていくことで、オンラインリハビリは、より多くの患者さんにとって、身近で利用しやすいサービスへと発展していくでしょう。
オンライン時代を生き抜く!理学療法士に求められる「新たな役割」と「スキル」
オンラインリハビリの普及は、私たち理学療法士の働き方や、求められる能力に、大きな変化をもたらします。これまでの対面中心のスキルに加えて、オンラインという新しい環境に対応するための「新たな役割」と「専門スキル」を身につけることが、これからの時代を生き抜く鍵となります。
役割①:高度な「評価・指導スキル」!限られた情報から的確な判断と指示
オンライン環境では、触診や詳細な身体計測といった、直接的な評価手段が制限されます。 そのため、限られた視覚情報や、患者さんからの主観的な情報、あるいはウェアラブルデバイスからのデータなどから、いかに的確に患者さんの状態を把握し、適切なリハビリプログラムを立案・指導できるかという、**高度な「評価・分析能力」と「指導スキル」**が求められます。
- 鋭い観察眼: 画面越しの患者さんの表情、動作、姿勢、環境などから、多くの情報を読み取る力。
- 的確な問診スキル: 患者さんから、必要な情報を効果的に引き出す質問力。
- 明確で分かりやすい運動指導: 画面越しでも、患者さんが正しく、安全に運動を行えるような、具体的で分かりやすい指示を出す力。
- セルフモニタリング指導: 患者さん自身が、自分の体調や運動の効果を把握し、セラピストに伝えられるように指導する力。
より**「頭脳」**を使った、クリニカルリーズニング能力の重要性が増すと言えるでしょう。
役割②:「コミュニケーション・コーチング力」!非対面でのモチベーション維持
オンラインでは、非言語的なコミュニケーションが伝わりにくいため、より意識的な、質の高いコミュニケーションが求められます。 また、患者さんが自宅で一人でリハビリに取り組む上で、モチベーションを維持し、主体的な参加を促すための「コーチング」的な関わりも重要になります。
- 共感的な傾聴: 画面越しでも、患者さんの言葉や表情から気持ちを汲み取り、寄り添う。
- 明確な目標設定と共有: 患者さんと一緒に、具体的で達成可能な目標を設定し、共有することで、意欲を高める。
- ポジティブなフィードバック: できたことや小さな変化を具体的に褒め、自信を持たせる。
- 自己効力感を高める関わり: 「あなたならできる」という信頼を伝え、患者さんの主体的な取り組みを後押しする。
- 定期的なフォローアップ: オンラインセッション以外の時間でも、メールやチャットなどでこまめに連絡を取り、孤立感を防ぐ。
**「言葉の力」**で、患者さんの心を動かし、行動変容を促すスキルが、ますます重要になります。
役割③:「テクノロジー活用能力」!IT機器やアプリを使いこなすスキル
オンラインリハビリを提供する上で、ICT機器(パソコン、タブレット、スマートフォン、Webカメラ、マイクなど)や、関連ソフトウェア・アプリ(ビデオ会議システム、リハビリ支援アプリ、ウェアラブルデバイス連携システムなど)を、スムーズに使いこなすことは、もはや必須のスキルです。
- 基本的なIT操作スキル: 機器のセッティング、アプリのインストールと操作、オンラインでの資料共有など。
- トラブルシューティング能力: 通信環境の不具合や、機器の操作ミスなど、オンライン特有のトラブルに、ある程度対処できる能力。
- 新しいテクノロジーへの学習意欲: 次々と登場する新しいツールやサービスに対して、積極的に情報を収集し、学び、活用しようとする姿勢。
テクノロジーを**「便利な道具」**として、恐れずに使いこなせるようになることが、オンラインでの活動の幅を広げます。

役割④:「セルフマネジメント指導力」!患者さんの主体的な取り組みを促す
オンラインリハビリは、セラピストが常にそばにいるわけではないため、**患者さん自身が、主体的に、そして継続的にリハビリに取り組む「セルフマネジメント能力」**が非常に重要になります。 理学療法士には、このセルフマネジメント能力を高めるための指導力が求められます。
- 目標設定支援: 患者さん自身が、自分の生活目標とリハビリ目標を結びつけられるようにサポートする。
- 行動計画の立案支援: 具体的に「いつ」「どこで」「何を」「どのくらい」行うのか、無理のない計画を一緒に立てる。
- 自己効力感を高める: 「自分にもできる」という自信を持たせ、小さな成功体験を積み重ねられるように支援する。
- 問題解決スキルの育成: リハビリを続ける上での障壁(痛み、時間がない、やる気が出ないなど)に対して、患者さん自身が解決策を見つけられるようにサポートする。
- 適切な情報提供: 信頼できる情報源を示し、患者さんが自分で情報を得て、判断できるようになることを促す。
**「教える」だけでなく、「患者さんが自ら学ぶ力を育てる」**という、教育者・コーチとしての側面がより強くなります。
役割⑤:「多職種・他機関との連携強化」!地域包括ケアのキーパーソンへ
オンラインリハビリは、単独で完結するものではなく、地域包括ケアシステムの中で、他の医療・介護サービスと連携しながら提供されることが理想です。 理学療法士には、オンラインというツールを活用しながら、多職種・他機関との連携を、より積極的に、そして効果的に行う役割が期待されます。
- ケアマネジャーとの密な情報共有: オンラインで得られた患者さんの情報を、ケアプラン作成に役立ててもらう。
- 主治医や訪問看護師との連携: 患者さんの状態変化や、リハビリの進捗状況をオンラインで共有し、治療方針を協議する。
- 地域の社会資源(デイサービス、地域の運動教室など)との連携: オンラインリハビリと、地域の通いの場などを効果的に組み合わせる。
- 家族への情報提供と指導: オンラインを通じて、遠方に住む家族にも、患者さんの状況を伝えたり、介助方法を指導したりする。
オンラインというツールは、**地域における連携の「ハブ」**としての理学療法士の役割を、さらに強化する可能性を秘めているのです。

オンラインリハビリは未来のスタンダード?変化を捉え、PTの新たな価値を創造しよう
オンラインリハビリテーション。 それは、私たちの働き方や、患者さんへの関わり方に、大きな変革をもたらす、まさに**「未来のスタンダード」**となり得る可能性を秘めた、新しいリハビリテーションの形です。
確かに、触診ができない、ITリテラシー格差、信頼関係構築の難しさといった、乗り越えるべき課題も存在します。 しかし、それ以上に、
- 地理的な制約を超えて、より多くの人に専門的ケアを届けられる
- 時間的な柔軟性を高め、リハビリを継続しやすくする
- 感染リスクを低減し、安心・安全な環境を提供する
- テクノロジーを活用し、より個別化された、効果的なアプローチを可能にする といった、計り知れないほどの**大きな「可能性」**を秘めているのです。
私たち理学療法士は、この変化の波を、単に「受け入れる」だけでなく、主体的に「捉え」、そして「活用」していく必要があります。 オンラインという新しいツールを使いこなし、
- 高度な評価・指導スキル
- 共感とコーチングを伴うコミュニケーション力
- テクノロジー活用能力
- 患者さんの主体性を引き出すセルフマネジメント指導力
- 地域を繋ぐ連携力 といった、新たな役割とスキルを身につけることで、理学療法士としての価値を、さらに高めていくことができるはずです。
もし、あなたが**「オンラインリハビリに挑戦してみたい」「新しい働き方で、自分の可能性を広げたい」**と考えているなら、オンラインリハビリに積極的に取り組んでいる医療機関や企業の情報を集めてみたり、転職エージェントに相談して、そうした分野へのキャリアチェンジの可能性を探ってみるのも良いでしょう。
変化を恐れず、未来を見据え、理学療法士としての新たな価値を創造していく。 その先に、きっと、より多くの患者さんの笑顔と、あなた自身の成長が待っています。 オンラインリハビリという新しいフロンティアで、あなたの力を存分に発揮してください!